共同親権で離婚後も父母の収入は合算され、福祉を受けられず

夫にはDVや虐待の自覚はなく、復縁を望んでいる。そのためわたしはいまだ婚姻中の身だ。自治体等の福祉サービスを受けたくても、夫婦あわせた世帯所得で判断され、はじかれる。

DVや虐待から逃げた母親・父親の多くは、なかなか相手に離婚を認めてもらえず、離婚成立までの数年間、ひとり親手当や生活保護なども受けられない。DV加害者は相手を支配することにこだわって調停や訴訟をわざと引き延ばすことがあり、これを「リーガル・アビューズ(法的嫌がらせ)」という。

離婚後も共同親権となれば、たとえ相手から養育費を受け取っていなくても、所得は元配偶者と合算される。単独生計なら生活保護を受給できたシングルマザー/ファーザーも、その多くが対象外となる。共同親権は離婚済みの家庭にも適用されるため、生活できなくなる人も出るだろう。これは実質的に「法の不遡及ふそきゅうの原則」に反するに等しいのではないか。

また、養育費というと高額に聞こえるが、法定養育費は子育ての実費にはとても届かない。そもそも養育費を受け取っているのは母子家庭の3割未満、父子家庭では1割未満だ。欧米や韓国のような養育費の立て替え制度や徴収制度も日本にはない。それらのインフラを整えず、共同親権のみを導入しようとしているのだ。

元AKB秋元才加らも署名、爆速の法制化を危ぶむ22万筆

2023年秋の段階では、法案があまりにずさんなため、まさかこのままでは成立しないだろうと見る弁護士や心理士、支援職などの実務家も多かった。だが与党は強引にこれを通す。

2024年1月、通常は全会一致になるまで法案を揉む法制審議会を、共同親権は多数決で強引に通過した。そして2024年4月2日、衆議院の法務委員会にかけられ、わずか14日間、たった15時間程度の審議で可決された。これから参議院に入る。

急スピードでの法案成立を目指す与党に対し、共同親権に反対するオンライン署名は急激な伸びを見せ、4月17日時点で22万筆を超えている。

【図表】離婚後の共同親権で懸念されること
筆者作成

4月9日には劇作家の鴻上尚史氏がAERAdot.上の連載で、「『選択的夫婦別姓』は25年以上議論しているのに」進まない一方で「『共同親権』は、2024年中の成立を予定しているという爆速」と指摘した。

4月11日には大ヒットドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」原作者の漫画家・海野つなみ氏がX(旧ツイッター)で「#共同親権を廃案に」と投稿、翌12日には、元AKB48の秋元才加氏が「STOP共同親権」の署名リンクと画像をポストして話題となった。ようやく国民に情報が届き始めたところだが、与党はまるで「問題点が知られる前に」と成立を急ぐようだ。